2時間削っただけで心血管疾患の起因にも
近年うつ病の初期症状として注意喚起がなされている不眠症。寝つきが悪かったり、睡眠時間が極端に減ってしまったりと日常生活に支障をきたす場合がある睡眠障害のひとつだが、「
ちょっと眠りが浅いだけだ」といって特に気にしていない人もいるのではないだろうか。
しかし不眠症の男性にはショッキングな事実が、
アメリカ睡眠医学会(AASM)の研究により明らかになった。研究責任者でペンシルバニア州立大学睡眠研究治療センター(ペンシルバニア州ハーシー)所長のアレクサンドロス・N・ブゴンツァス氏は、「
どのような理由があっても、睡眠不足は健康によくない」と話している。
ブゴンツァス氏の論文によれば、若年層は睡眠時間を2時間削っただけでも
心血管疾患(心筋梗塞など)の原因となる炎症を起こしやすくなるという。特に慢性不眠症(睡眠時間6時間未満)であると特定した男性らを14年後再調査したところ、そのうち
51.1%が亡くなっていた。通常の男性の死亡率が9.1%なのに比べると、その死亡率の高さに恐怖すら覚える。
一方で女性の場合は不眠症と死亡率に因果関係は認められなかった。「
女性の調査期間が短かったこと、男性の不眠症患者は少ないが重症化するケースが多いためこのような結果になった」とブゴンツァス氏は語っている。
同時に「
不眠症が直接の原因で死亡することはない。生まれつき寝つきの悪い人がいるだけだ、という意見もある」とも話している。実際、糖尿病や高血圧を持つ不眠症の男性は、比較的健康な不眠症の男性よりも死亡率が高かったそうだ。
不眠症を「厄介者」というだけでは片づけられないことがおわかりいただけたかと思うが、同時に他の生活習慣病に目を向け、自分の健康と真摯に向き合うことも大事だということを忘れてはならない。
American Academy of Sleep Medicine(アメリカ睡眠医学会)